夫にもう一度、名前を呼ばれた日
新しいお家に、二人の子供。優しい夫と4人暮らし。この生活が狂い始めたのは3年前でした。
最初は、全く気が付きませんでした。物忘れが増えたことを、夫は黙っていました。まず、仕事の要件を忘れてしまうことがあったそうです。
バリバリ働き盛りの40代でしたから、疲れのせいだと思っていた。のちに、そう聞きました。もちろん、仕事のミスは許されないので、夫はメモを取るようにしました。
最初はメモ書き程度でした。「今日は、◯◯さんと会う」というもの。それでも不安になり、日時を書き込むようにしました。最終的には、顔と名前が一致しないことや、メモ書き自体を忘れてしまうまで進行しました。
限界を感じた夫は、ようやく私に打ち明けました。正直、これからの生活に不安はよぎりましたが、まずは病院です。もしかしたら、過労かもしれない…。それならゆっくり休んでもらおう。
しかし、診断の結果、先生から告げられたのは、アルツハイマー型認知症でした。
認知症は治らない、治せないのか?
私は、絶望しました。なぜなら、認知症は治せないと聞いていたからです。ただ、進行を遅らせることも出来ると、聞いた記憶もありました。それから私は本屋やインターネットの情報をあさり、ひとつの結論にたどりつきました。
希望は、あったのです。そして残念ながら、治る治らないは、認知症の程度によるのです。
診断「軽度の障害 MCI」
あなたは「MCI」を知っているでしょうか?MCIとは軽度認知障害。
認知症の一歩手前、まだ引き返せるところがMCIになります。糖尿や他の病気と同じように、認知症も軽度・早期発見であるほど、希望は大きくなります。
専門の機関によると、MCIの段階なら最大44%は健康な状態に引き返せるとのこと。検査は10分程度で分かります。(下のリンク先を参照してください)
病院に行くのはもちろん有効ですが、本人が嫌がったり、自覚がない場合などに利用してください。MCIを放置すると、5年後に約半数が認知症のステージが進んでしまうそうです。
脳が萎縮した
MCIの先にあるアルツハイマー型認知症が、治らない治せないと言われる理由を知っていますか?
実は、認知症は「現代の医学で、脳に何が起きているのか不明ではない」です。何が起きているかわかっているけれど、治療法が無いのです。
具体的に起きているのは、脳が萎縮(いしゅく)。縮んで、物理的に機能を失っている状態。だから、薬で治すことが出来ません。そして早めに手を打つほど、認知症のリスクを下げ、進行を遅らせられる事ができます。
「認知症の進行は20年、30年前から始まる」。つまり70歳の重度認知症なら40代あたりから進行が始まっていたと考えられるようです。(70歳で認知症の症状が出た場合、69歳の1年間だけが原因ではない)。
それでも!私は、希望を捨てませんでした。そう思えた理由は、10年以上前に、テレビで見た話を覚えていたからです。
うろ覚えなので、要点だけ話します。事故で脳の片方をごっそり失い、その部分の機能を無くしてしまった子供。ところが、トレーニングを続けていたら、やがて残った部分の脳が失った部分の役割をはたすようになった話です。
記憶さえ残っているなら。もういちど、その「記憶倉庫」までの道をつなげることができれば、可能性はあると思いました。
なぜ?原因を考えた結果…
バリバリに仕事をして、子育てに積極的で、たまに料理をしてくれた優しい夫。
なぜ、認知症になってしまったのか?調べていく中で、認知症の予防には「脳トレより、食事や運動が重要」という話を聞きました。
「脳が痩せる」ことを防ぐためには、栄養が必要という意見です。確かに、うちの夫は、毎日頭は使っていたはず。血流をさまたげるタバコは吸っていなかったので、私の食事が原因だったのかもしれません。
食事で改善できるか?
例えばビタミン。人間にとってビタミンは、不足するとイライラやうつ、そして記憶の低下をまねくと指摘されています。この時代に、栄養不足や栄養失調なんてあるの?とあなたは思うかもしれません。
しかし、ペットボトル飲料やコンビニ弁当では栄養素が足りません。丼やラーメンなど1品の料理は基本的に栄養が乏しい。夫もランチは簡単に済ませてしまうことが多かったです。
もう一つ注目されるキーワードは”抗酸化”です。具体的にはビタミンC・E・A、ポリフェノール、亜鉛。しかし残念ながら、これらの抗酸化栄養素をサプリで摂取した場合、認知症や物忘れに確実な効果をもたらすとは言い切れません。
その理由ですが、サプリは健康に良いとされる成分が他種類入っています。どうやらお互いに影響して狙い通りの結果を出せないことがあるようです。
そこでまずは、脳に良いと言われるオリーブオイル。それからカカオやココナッツオイルを積極的に食べてもらいました。油の有効性についてはこの話が参考になりました。
サラダ油を取るという行為が、体内(特に脳内)にヒドロちゃんを蓄積させ、熱ショックタンパク質70(脳の神経細胞の生存に必須のタンパク質)を酸化損傷させます。その結果、神経細胞が死滅し、海馬が萎縮するという悪循環につながってしまうのです。
引用元:東洋経済オンライン
内容を簡潔にお話すると、サラダ油や植物油は脳に悪影響をおよぼすので、やめよう。それらの油を使った製品(マヨネーズ、マーガリン、ドレッシング等)もやめよう、ということでした。
加工食品の怖いところはこれです。知らない間に蓄積するのです。
しかし、食事を改善してから数ヶ月たったある日、私は夫の視線になんとも言えない不安を感じました。
もしかすると「私の事、わかっていないんじゃないか?」。私から話しかけことは、理解してくれている様子。ですがこの頃、夫から名前を呼ばれることがほとんどなくなっていたのです。
とても怖くて怖くて、直接問いただすことはできませんでした。
それから1年半。静かな日曜の夕食時、つけっぱなしだったテレビにとある「新成分」が取り上げられていました。「プラズマローゲン」です。
5ヶ月後。日曜日の朝。
子どもたちの予定も無く、ゆっくり眠っていたところで、私を呼ぶ声が聞こえました。あれ、夫の声かな?いや、夢か…。
ですが、私を呼ぶ声は、どんどん大きくなります。ゆっくり目を開けると、そこには昔のような笑顔で私の名を呼ぶ夫が立っていました。
「天気いいよ!どっか出かけない?」
あぁ、どうしよう。涙があふれてきました。この幸せな時間が、少しでも長く、ずっとずっと続いて欲しい。そう願っています。
物忘れとの違いは何?
仕事で今までふつうにできた簡単な作業の手順を忘れてしまう。そんなことが増えた時。
もしあなたが忘れたことを自分で気づいたら、それは軽い物忘れです。「取りに行った物を忘れてしまう」「すぐに名前が出てこない」、このような”うっかり”は認知症とは違います。
逆にもし、「忘れたこと自体を忘れてしまう」場合は、”認知症”の可能性が高いです。
ストレスと海馬
日常で受けたストレスは、脳にダメージを与えることが、研究で分かっています。具体的にはストレスホルモン(コルチゾール)が「海馬(かいば)」に影響するそうです。
海馬は脳の認知機能をつかさどる部分。もし海馬が萎縮してしまうとどうなるか?
日常的な出来事や勉強などを通して覚えた情報は、海馬で一度ファイルされて整理整頓されます。
その後、必要なものや印象的なものだけが残り、大脳皮質に溜められていきます。
つまり、私たちの脳の中で新しい記憶は海馬に、古い記憶は大脳皮質にファイルされているのです。
ですから、海馬が正しく働かなくなると、私たちは新しいことをうまく覚えられなくなってしまいます。 引用元:www.ninchisho.jp
ついさっきのことを忘れてしまうのは、海馬が原因の可能性があります。
◎では、ストレスによる物忘れはどうでしょうか?
結論から言えば、ストレスによる物忘れなら、簡単に改善できます。これは、脳の使いすぎ。つまり、脳が疲れている状態です。だから脳トレ(単純な計算を解くなど)は脳が疲れてしまうので、逆効果になります。
ストレスによる物忘れは、脳を休ませることが一番の対処法になるようです。
リラックスしよう
朝5時に起きて、出勤。
上司に怒られたり部下の働きに不満を感じたり、夜9時に帰宅してそこから育児に参加したり、休日は家族サービス。あなたは休む暇が無い状況かもしれません。
でも、だからこそ積極的に意識的に、脳を休ませなければいけないのです。健康な生活を続けたいなら、プロとして意識的に休憩を取らなければいけません。
とにかく一つ。あなただけのリラックス方法を見つけることです。
音楽、映画、お買い物。あなたがリラックスできることなら何でも良し。たった1時間程度のことでも脳はリラックスします。
認知症でないならば、休ませることで脳の働きが増して、仕事はうまくいきます。失敗は少なくなります。人間関係、夫婦、家族間が円滑になります。失敗で凹むことがなくなり、気持ちに余裕が出るから優しくいられます。
知り合いに、10年間フル活動して故障した人がいます。その後の10年をうつ病で過ごすより、休みながら元気に30年間働き続けたほうが、家族を守れます!
私がおすすめするリラックス方法はアロマテラピーです。理由は、物忘れの原因が「ストレス、自律神経、ホルモンバランス」だからです。
例えば、あなたが眠れない時にアロマを嗅ぐと…。「交感神経と副交感神経」を簡単に切り替えられます。そして素早くゆっくり質の良い睡眠が取りやすくなることが期待できます。
アロマテラピーの有効性
認知症にアロマテラピーという話を聞いたことがあるでしょうか?
私もそうだったので、いくつか論文等をあたってみました。しっかり研究して商品化をしている会社もあるようです。仕組みは、アロマの匂いが海馬など記憶をつかさどる部分を刺激して、働きを活発にすることが狙い。
[blogcard url="http://www.hyperbrainlabo.com/ninchiaroma/index.shtml"]
重度の認知症は、「医療機関で治療すべき」だが、軽度の認知症やMCIの予防として、副作用がなく手軽に導入できることがメリットになるようです。たしかに、アロマテラピーを取り入れることに損はないと私も思います。(金銭的な意味を含めて)
先ほどの株式会社ハイパーブレインによると…
認知症の主な原因であるアルツハイマー病では、その中核症状の認知機能障害を、アロマセラピー(芳香療法)で治療可能であるという技術を鳥取大学医学部生体制御学講座の研究で実証しました。アロマセラピーとして使用した精油はローズマリー、レモンオイル、ラベンダー、オレンジオイルの4種類です。
現在、認知症に対する根本治療薬は存在しませんが、当講座が開発した手法によるアロマセラピーは根本治療法として機能する可能性が高い。 引用元:株式会社ハイパーブレイン
ローズマリー、レモンオイル、ラベンダー、オレンジオイル、いずれも簡単に手に入るものです。海馬が忘れてしまった記憶を呼び起こすことができたら…。
加齢が理由
(認知症ではなく)物忘れに関して。人間は加齢により脳が老化して記憶が抜け落ちて行くイメージがありますが、本当は思いだせないだけで、実際は記憶が存在することも多いそうです。
だから、香りを嗅ぐだけで記憶が復活する可能性があるという話です。
認知症の場合は放置すると”進行”します。だから、より積極的な対処が必要になります。お話したとおり、認知症を治す薬はありません。ただし、今からやっておいた方が良いことはもう分かっているのです。
「脳の萎縮は薬で治せない」。だから、萎縮しないよう先手を打たなければいけません。
脳のトレーニング、趣味を持つ
例えば、友人の名前を一人ずつ思い出してみる。例えば、歴代の首相を思い出すのも良いと脳科学者の茂木健一郎さんがおすすめしています。
他には、文章の読み書きや計算、手や頭を使う趣味も効果あり。ピアノなどの楽器演奏、編み物、陶芸や園芸、日曜大工など仕事とは別の頭を使うと脳の様々な部分が活性します。
人生を楽しむほど、楽しい時間が長く続きます。